「化物語」から派生した本来語られるはずのなかった物語「猫物語(黒)」を読了。
本編でも軽く触れられた、ゴールデンウィークの悪夢の九日間について語られた物語。
正直にいって本編が終わってから語られた前日談や後日談はある意味力の抜けた物語であったのだが、アニメ化という形で語られた本編はやはりそれらを通じて終わった物語、言わば寝た子を起こすほどの出来事であったらしく、パワーアップしているように思った。
良い意味での化学反応がそこにあった。というか、それが今作品だった。
(以降ネタバレあり)
いや、冒頭から本書中盤180頁オーバーに至るまで話が1cmも進んでいないことといい、作中で本作品の刊行が遅れた理由やアニメ化、今までの作品とで明かされた秘密や新たに出てきた矛盾点に対する軽いジャブ、そしてそれらに混じって語られる赤毛のアンに関する備考や妹に対する変態行為など、見事なまでに「化物語」の西尾維新であった。
途中何度Twitterでツッコミたくなったことやら。
そして、この作品の本編、本題が始まることで、なぜ一度封印した語る気のなかった話を語り始めたのが分かった。
アニメ化されたそれからイメージされた羽川翼にはこの話で語られるような黒さが微塵も見られなかったからだ。
いやむしろアレが語られたからこそ成り立つ叙述トリックと言ってもいい。
羽川翼はあんなもんじゃないって言いたかったのかもしれない。
しかも言いたかったのは羽川翼本人かも。
そこまでの瞬発力をこの作品から感じた。
故にかまあ勢いの良いこと!
あれ?という間に終わっている。
しかもさらに同じような分量の今度こそは未知の物語まで既に発行されていたりする。
終わったと思っていた物語はまた目覚めてしまったようだ。