「黒澤明vs.ハリウッド『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」(2006)田草川弘を読了。
諸説あったこの話をみつかった資料とインタヴューを元に再構成したものだが、思っていた以上にひとつの形になっていたな。
ハリウッド方式と黒澤明の映画制作に対する常識の違いと、当時の東映太秦のスタッフ事情、さらには黒澤プロじたいが最初から抱えていた問題点がぶつかり、ただ危機察知が早かったが故にフォックスからしてみればこの程度で済んだという話か。
まあそれ以前に『史上最大の作戦』の太平洋戦争版というコンセプトな時点で人選誤っていたのは事実だな。
この時期ハリウッドでよくあった複数の監督による作品に対しての認識が黒澤明にはまったくなかったり、そもそも契約の時点でハリウッド側に名編集者が二人も居て黒澤明作品における編集の重要性理解していないのは。
というよりは自分たちの経験が逆にコミュニケーションの妨げになったというパターンか。
黒澤明が用意した脚本版、見たかったなあ。
フォックスの目論見からは完全にズレたものだったけれど本当に黒澤明らしい作品になっただろうに。
個人的な黒澤明オールタイムベスト(裏)が『醜聞』な私としてはあのラストに至ってしまうあたりが大好きなのに。
次点で撮入した時点での脚本を当人がそのまま制作費を湯水のように使えていたらどうなっていたかだな。
まあその時の真相そのものよりも、もしもの話の方が興味の対象でした。