「黒澤明 樹海の迷宮」を読了。
先日読んだ「黒澤明vsハリウッド」では始まる前に終わってしまったが、今度は始まってからの無事作品として完成するまで。
両者の時間軸や、ハリウッドとソ連等々対照的な部分も多いせいかひとつの連続した話としても予想以上に楽しめた。
実際には間に『どですかでん』が入るものの『赤ひげ』でいわゆる黒澤明的な作品のひとつの到達点を見せてからの『デルス・ウザーラ』という別の形でありながらそれでも根っこに存在する黒澤明な作品が出来るまでの苦労を見られたと共に、まあたぶん今の自分の年齢、当時の野上さんより上の年で読んだことによるある種の人間黒澤明に対する共感が、何というか今まで目にしてきたドキュメンタリー上の黒澤明の声や表情で再現されて、ほんと合わせてひとつの大きな物語を見ているような感じでした。
そう、読んでいるというよりまるで観ているという感じ。
それがまた『デルス・ウザーラ』という作品と繋がる部分があっていろいろとくるものが。
けど本当にこの作品、『デルス・ウザーラ』を撮る事が出来て良かったな。
その時の状況はまさにソ連という国があって本当に良かったと思う。
それがなければコッポラ、ルーカス、スピルバーグ的な人達が主導権を握れるようになるまで何を撮ることも出来なくなっていたかもしれないものな。
まあその場合は別のもの、もう少し力を抜いたものが観れたかもしれないが、その場合その作品が評価される土壌が出来るまでにまだまだ時間がかかっていただろうし。
しかしホント、正解のないものを探し続けて迷い続ける迷宮とそこから産み出された物語というのは身に滲みる。
同時に自分一人で産み出したものではないことであるが故にこういったものができることの面白さが、たぶん最後まで現役だった理由でもあったのだろうなと思いました。
これだからこそ面白い!