「スチーム・ガール」"Karen Memory"(2015)Elizabeth Bear
映像化するのなら冒頭は映像無しのモノローグから始めたいな。そしてモノローグの内容に従って徐々に状況が把握できるようになり。
それくらい冒頭の話の組み立て方は魅力的。
徐々に物語世界の風景が見えてくる様は先の展開への期待が膨らむ。
ミシンは言語では何になっているのだろうと思いながら読み進めていたが、流石にこれは直訳っぽいか。言われてみればありかも。逆にそこからもう少し話を膨らませることが出来るかもしれない。
邦題からしてもう少しスチームパンク寄りに話が進むかと思っていたがそこは最低限のエッセンスに留めて、クライマックスで爆発。
そこに至るまであんなものやこんなものが所々登場して期待を高める。
このアンバランス感もこの作品の魅力かな。
SF色を排除してもたぶん十分面白い。
そこにSF要素が入ったからこそ彼女に活躍の余地が産まれたというところが肝か。
ヴェルヌの作品の使い方は見事。そこで一気に読者と主人公の距離感が縮まった。何だ仲間じゃないかって。
スチームパンクならではの多ジャンルの史実と空想のごった煮感に加えて人種や思想まで多種多様なものを詰め込む事でさらにガジェット感やスノビズムまで刺激してくる。
それがスチームパンクの魅力であることを再認識させてくれた作品でした。