2019/02/11

「やがて君になる佐伯沙弥香について」(2018)入間人間

「やがて君になる 佐伯沙弥香について」(2018)入間人間
「やがて君になる」のスピンオフノベルであり、同作品中の登場人物、佐伯沙弥香が佐伯沙弥香という君になるまでの物語でした。
これはまた上手いことを考えたなあ。
出だしをあそこにした事で生々しいものに感じさせるあたりもまた上手い。
芽生える前の予感のようなもの。見えそうで見えなかったものを持っていたからこそ陥ってしまった世界。
先輩の思考もまた沙弥香を通すと分かりやすいものになる。
たぶんふだん周りが楽しそうに話している自分の知らない事を知るために自分の思い通りに動いてくれそうな子として沙弥香を選んだのだろうな。彼女にとっては最初から沙弥香ではなく行為そのものにしか興味がない。
ただしそれを沙弥香はまだ何なのかを知らない。
ただ漠然と最初から気づいていたはずなのに。
故に怒りは自分に向けてでもあるのだろうな。
そして改めてやはり侑と沙弥香は似ているという意味ではもう一人の侑の物語でもあるのか。
初対面の燈子と沙弥香も良かったな。
お互いが仮面を付けたまま探り探りの会話。
燈子の仮面を沙弥香は知っているが燈子はまだそれを知らないという状況になる前の二人。
これは沙弥香に感情移入してしまうよなあ。
本編でのあの復讐のシーンがまた一段と重くなった。少しくらいは自分が何をしたのか気づいたのかな、先輩。自分が遊びだと思っていたことが沙弥香にとって何だったのかを。