2020/01/02
『キング・コング』"King Kong"(2005)
(2020/01/01 at NHK-BSプレミアム録画)
これはもう濃密な想いが詰まった作品だな。
100年も経たない当時のトレンドに満たされた世界での始まりは単純な富への欲求とは違うものをそれぞれが欲していて島へと向かう旅路へと巻き込まれる。
その欲が発生したり垣間見えたりする仕込みだけでももうニヤニヤしっ放し。
中でもやはりその道行きへの先導者である映画監督が女優に淡い恋をしていく過程やそれを自分が巻き込んだ脚本家に持っていかれる過程がなんとも言えない。
そして島に到着しようやく物語は本番を迎える。
一切のコミュニケーションの可能性が見出せない者たちを挟んで遭遇するコングとその生きる世界。
アンとの初顔合わせでの身体を引っ張って腕を縛る縄を引きちぎる所からその寝ぐらの一つにまで辿り着くまでの良く五体満足でいられたよなと思うような道行きも凄かったのだが、それを遥かに上回るコングとアンが心を通わせるまでのシーンのなんと凄い事か。
立体感溢れる地形を思い切り使いまくってのコング達やその追跡者達の道行きは圧巻だったな。
それこそよくあの場を生き延びたとしか言いようがない。
さらに、そこまでは犠牲者はそれほどではなかったものの追跡者達が一度追いついた後の凄惨さよ。
もう無理じゃんと思った所で、先に一人で戻るという死亡フラグを実行していたバクスターが援軍を連れてくるという光景よ。
ここで船長の頼もしさを再確認した上での捕獲作戦。
今までの行動のすべてを自己肯定していたフィルムを失った映画監督が一番厄介なプライドという欲を焚き付けて望むその様とコングとアンとの絆の対比がそれどころじゃない状況の上に成り立っている様がまた素晴らしい。
そして物語は再び立体感溢れる街NYへ。
もう信頼できるのはバクスターだけだ。
ホントに役者って奴はという坑道のカナリアセンサーの発動後からの素晴らしい事。
すっかり意欲を失ったコングのこの上ない地雷を踏んでゆくステージの進行で勢いをつけた彼の怒りはヒロインとの邂逅というインターミッションを経てクライマックスへと突入する。
当然のように導かれるエンパイアステートビルとその上から見る光景の美しさは島でのそれを彷彿とさせ最終局面へ。
そうよ。これが観たかったのだ。
コング対複葉機。
それがアンとの心の絆を交えながら延々と描かれていく事の至福よ。
島での対蝙蝠の状況を凌ぐ
高度でのそれで一番怖かったのはビルのテッペンにハイヒールで立つアンの姿でした。
何かもうキャラクターの一人一人を追いかけるだけでお腹いっぱいになるようなこの作品を作る為の欲に勝るものもまたなかったのだけれどね。