『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』"No Time to Die"(2021)
(2021/10/01 at 池袋グランドシネマサンシャイン シアター12 IMAX2D)
これはまた詰め込めるもの詰め込めるだけ詰め込んだな。
最初のあそこでだいたい何となくは分かったが原作シリーズのあそこに繋げてくるとはね。
クレイグボンドでやりたい事ホントやってくれたなあ。
まあ深読みすればあれはアレだしアレもそうだよなあとか。
うう、色々と書きたい。
さて、クレイグボンドについて改めて。
前任者である意味行き詰まっていたこのシリーズを、当時の風潮とはいえリブートし、それまでの映画がつけたイメージが故に出来なかった部分を見せてくれた一方でそれまでの映画が与えていたイメージも上手く溶かし込んで、それこそ初期の映画シリーズがやっていた原作をシャッフルしてミックスしてをさらに過去の映画シリーズも巻き込んでのシャッフルミックスして作品にしてしまうというこれ以上ない至福の時間を与えてくれました。
今回も、あ、こうなったらこうなるよねで何度ニヤニヤさせてもらった事か。
あれとあれを混ぜてアレっぽくしたりとか、けどアレ一回やったからまさかこういう形でくるとは思わなかったとかね。
けどそれは、しっかり拾うんだ。
そこを今回はそういう解釈に変更してこう見せたのねとか。
さて、こんな感じで普通の受け取り方出来ないので今回どうなるんだろうなあ。
そして。
以下、散文的に思いつくままに。
以下はネタバレという奴。
ボンドに苦痛を与えるのは原作の本質。
それに人間臭く対処する様が彼の魅力。
彼は不屈ではあるが何度も心折れる。
最も心折れたのはオリジナルではヴェスパーとトレーシー。
クレイグボンドでは以前のシリーズでは描かれる事の無かった前者をしっかり描き、代わりにトレーシーは形を変えてマドレーヌとマチルドにしたのか。彼にとっては死よりも辛い呪い。
Mr.ホワイトのポジションも見方によってはドラコと似たようなものだからな。あそこまで直接的ではないし、そもそもドラコは商売敵ではあっても私怨はない。
まあそんなふうに思えるまでに配置されたのはサッチモのあの曲。
OPには思わずニヤリとさせられたがこんな仕掛けを用意していたとはねえ。
そして細かくは原作再読しないと明言出来ないがオリジナルの「二度死ぬ」とフレミング死後に続けられたシリーズ中の「赤い刺青の男」のエッセンスが色々と。
たしか毒やら細菌やらはこの2作品で扱われていたし、そもそも二度死ぬはオリジナルでは女王陛下に続く作品。今回のEDはこの2作品がらみのあそこら辺から次作が始まるんじゃないかなと踏んでいる。
毒草庭園とミサイル発射口が合体していたのはまさに原作と映画の合体だったな。
庭園に従事していた作業者が映画で描かれた海女を何となく連想させるものだったり、サフィンに対する態度が日本式だったりするなあと思っていたら畳が出てきた時には少し笑った。
さらには日本式のお辞儀を通り越してボンドに土下座をさせるとはねえ。
と、ここらへんが原作を強く連想させるものとしてここからは映画シリーズ絡み。
アストンマーチンのマシンガン回転連写はやってくれたなという感じ。
他にも色々描きたいがここからはクレイグボンドとして。
ルネ・マティスやMがああなってしまった以上、特にボンドがここで退場かもしれないというタイミングであるが故にフェリックス・ライターの退場はここで来たかという感じ。
原作や映画で描かれたアレはそういえば無かったが、そういや『消されたライセンス』の発端は彼だったな。
CIA組はいずれもキャラクターの造形が見事。
アッシュのいかにもなアメリカ人っぷりは映画シリーズで描かれたアメリカ人達を彷彿とさせる陽気で残忍さを兼ね備えていた。
まあそれよりもパロマだよなあ。
3週間!!
素晴らしかった。
対するMI6組。
Mをあそこまで追い詰めたのはブロフェルドだし結果として彼の思惑通りの結果に陥ってしまった。
次回退場していてもおかしくない事をしているのだがどうなるか。
ビル・タナーはどこまでいっても彼だったな。
そういう意味ではマネーペニーにしてもQにしても同じか。
立場上二人ほどにはなれないのだけれど、あの職場では一番の友人なんだよなあ。
で、今回MI6組で一番活躍するのがノーミというか007。
その数字に過ぎないものが何を意味するかを見せてくれる最も頼りになる存在だった。
あと一歩の所で追い詰められずに取り逃がすことが多いのも前任者からの伝統か。
彼女のプロフェッショナルぶりが本来の007だった。
さてブロフェルド。
彼をあのポジションに置いた以上どうするのかと思ったがまさかねえ。
まあそれも今回が「女王陛下」ポジションと考えれば形はどうあれだったが、彼どころかスペクターをこんなにもアッサリとというのは意外過ぎて見事としか言いようがなかった。
獄中のトリックを結果的にあの外見に持っていくとかどれだけあの作品に愛があるんだよ!
その彼が使っていてその後サフィンについたあの男はもはや映画シリーズでは伝統芸な便利な暗殺者。
実はその武器が彼自身を殺す鍵となるのも伝統芸なんだよなあ。分かってらっしゃる。
で、ようやくサフィン。
ボンドに自身を投影する悪役が3作連続となったのは逆にボンドという存在がそういう業を担っているからではあるけれど、三者三様であったのが最初から仕組まれていたのだとしたらそれはそれで見事だったな。
直接的な復讐の対象がボンドではなかったが本来そうなってもおかしくないんだよなボンドは。
復讐と善悪は一致しない。
さて続投のマドレーヌだ。
クレイグボンドの一番良かった事の一つが一つの連続した物語である上にボンドの造形もその上に成り立っているという所で、このポジションの彼女が連続して存在している上にまさかのアバンだったからなあ。
ここまで愛されるとはと思っていたらそのアバンにこんな仕掛けまで用意してくるとは思っても見なかった。
別れのシーンのあのジェスチャーもこう繋がるとも思っちゃいなかった。
ちゃんと仕事続けていたんだ。
で、最後はボンドだ。
彼があの表情を見せるとは。
そこに尽きるかな。
だからこそのこの終わり方だが故に次をどうするかだな。
地獄はまだ彼を受け入れる準備は出来ていないとなるのかそれとも。