(2023/09/23 グランドシネマサンシャイン シアター6)
シリーズ60周年記念上映での鑑賞。
4Kレストア版。
やはりフィルム上映を念頭において作られた作品はこうやってレストアされるとカット毎のクオリティや質感のバランスでつまづいたりもするのだけれど、それらを差し置いても当時のセットやロケーション、やりたかった事見せたかったものをここまで綺麗に見えるのは良いなあ。
紗をかけたダイアナリグのアップとかはその前後とのコントラストがきつくなったりとかはあるのだけれど、例えばドラコの誕生日パーティーでの闘牛シーン、Mやボンド、ドラコの各執務室の内装。そういった本筋でない所にも心奪われてしまう。
で、そういったもの一切合財を体験した後に続くのが、ボンドの正体が割れてケーブルカーの機械室に閉じ込められてからのそれこそ小休止を挟むものの延々と続くアクション、そしてロケーション。
実を言えばここら辺だけビデオで何十回もひたすら見続けていたこともあるくらい好きな所をここまで素晴らしい状態で観られる素晴らしさ。(語彙がない)
スキーチェイスの素晴らしさ、BGMのオンオフで作られるリズムやサスペンス。何回も繰り返されてやっと得られる成果とか、なんとかやりすごそうと下を向いた足元でサッと止まるスケート靴とか吹雪をやり過ごし夜が明けてからの再スタート。
果ては圧倒的な雪崩のシーン。
そこから物語上必要最低限な手続きを経てあの夕陽をバックに3機編隊で飛ぶヘリのシーンの美しい事。
あれは本当に涙出てきた。まあその後に本当に泣かされるんだけれどね。
どうしよう。色々と止まらなくなってきた上に取り止めも無くなってきた。
レイゼンビーにしてもダイアナリグにしてもいいんだよねとか、それこそあのオープニングシークエンス!とか、ユアアイズオンリーのアバンとかカジノロワイヤルのあのシーンとか延々と語っていたくなる。
観られて本当に良かったよ。
できれば雪崩と夕陽のシーンのためだけでも良い劇場で。
あ、ここまでピーターハントにもジョングレンにも触れていない。(笑)
それよりもまずはMGMとUAのオープニングロゴの鮮明な事。
それに続く深夜のカーチェイスから夜明けの海岸、そして早朝の格闘という光源の移り変わる時間帯での一連のシークエンスはこれドルビービジョン案件だよなあ。
前述のパーティーシーンやピスグロリアに入るシーンは昼間でしっかり景色を堪能なのだけれど、これまた前述のピズグロリアからの脱出シークエンスは夜から始まって馬小屋までが日付を跨ぐ前。
そして逃走再開から雪崩までが完全に日が昇ってからでトレーシー救出が夕陽をバックに。ん?あれ朝焼けだっけ?
こういった時間帯跨ぎで刻々と景色が変わる中のアクションシーンがわかってるなあという感じなんだよなあ。(上から目線)
話変わるがカーリングのシーンはトレーシー救出の際にマシンガン撃つボンドと同じ場所で同じような体勢なのが地味に好きだったりする。
好きなシーンといえばメッサヴィー卿の私邸のシーン。
執務室というかその前室のマネペニーへのありがとうを受けての目線を交わさないボンドとの会話は大好きだ。
口紅の8があの体勢でよくあそこまで綺麗に描けたよなあとかボンドが手持ちのアイテムを工夫してドア解除の細工を作って出て行ったのに、戻ってきたら爪ヤスリであっさりとでのシーンも好き。
これまた地味にピズグロリアで彼女達と初めて会う一連のシーンの後ろで(だったよな)整えられるたぶん風景自慢だったであろう元レストランの名残りを示すディナーの準備や、それがたまたま居合わせた?現地人員の台詞にも出てくる所との相互補強。
あの建物が風光明媚なのは前述の救出劇の時にさらに実感するのだけれど。
ここら辺も語り足りないが次へ行こう。
メインタイトルでの今まで振り返りでコネリーボンドのそれまでが流れて、さらに辞表を書いて身辺整理の為片付けているボンドの机の中から出てくるアイテムとBGM。ドラコの執務室へ連行されるシーンで掃除してるおっちゃんの口笛。地続きの作品だよという感じである一方でこの作品はコネリーとは合わないよなと思う一方で次作のダイヤモンドはレイゼンビーには合わないよなというあたりはある程度当て書きとなる部分やアドリブなんかもあったりするのかな。
と、これでようやくレイゼンビーの話ができる。
初登場のシーンはその顔つきまで含めて違和感あるのだけれどアクションシーンの映えはあの体格も活きていてボンドになってるんだよなあ。それら踏まえてラストシーンでは紛れもないボンド。もっともらしくないようにみえるシークエンスなのだけれど。
さて、ここもまだまだ語り足りないのだけれど、まだピーターハントが出てこない。
これじゃ永遠に終わらないから先にジョングレンに触れておくか。
この作品の前までこのシリーズの第二班の監督と編集をしていたピーターハントからその仕事を受け継いだのがジョングレンでその後ムーンレイカー以降彼も監督となるのだけれど、本作オマージュ的な所がそれらにあってそれも好きなんだよなあ。
諸々の権利がクリアになってようやく再登場したプロフェルドっぽい奴の特徴があれなのが、その直前の墓参り含めて本作の続きであったり、そのユアアイズオンリーは鳩との関係性や頂上の寺院など、けっこう本作の匂いが強くて好きだったりする。
同様に監督は違うがリビングデイライツやカジノロワイヤルが好きなのも少なからず本作と同じ匂いがあるからというのもある。
と、ここまで書いてもまだ出てこないピーターハント。
まあ今まで書いたすべてがピーターハントの魅力なのだけれど、それは置いても彼の魅力はアクションシーンだよなあ。何よりもスキーシークエンス。このカット割最高だしこれだけでも永遠に観ていられる。そういえば、そういうシーンがあると知らずに観ていた『インセプション』であんなシーンがあった時には血脇き肉踊ったよ。