2023/09/05記
今年新たに刊行された市川亮平訳を読んでからの昨年刊行の田口俊樹訳版も読了。
この方は血の収穫や動く標的も近年訳されているのか。
どちらも以前読んでいるのでまた読んでみるかな。
さて、余談はこれくらいにして本書を読んでの感想。
市川亮平版の感想でわかりやすいという言い方をしたがそれはちょっと言い方が間違っていた。
親しみやすい、砕けた表現が多いという方が正しいかな。それでいて私の持っているチャンドラーの書く文章イメージに近い文が多い。
どちらかと言えばチャンドラーを楽しむという意味では市川亮平版が良いかなと思う。
と、わざわざこんな事を書いたのは、より話を整理した上で「分かりやすさ」があるのはむしろこの田口俊樹訳の方かなと思ったから。
ある意味ここはどういう意味かという所での発見があったり、どういう単語を言い回す事で複数の意味を持たせている事をよりわかりやすく表現してしているのがこの田口俊樹訳だと思った。
その訳し方の違いで印象の変わる場面がいくつもあった。
そういった多数の視点でみたひとつの物語を堪能するという意味でこの2作品に加えて清水訳村上訳まであるのはホントに幸せだな。
さらに言ってしまえば作品そのものは一人称、一人の視点で描かれているのが面白い。
そしてこれらを踏まえてアルトマンの映画を見てみると、それらを原語で読んでいる人間がどう解釈してああいう形になったかというのも妄想できて面白い。
それが原作ものの映画として正しい在り方だと思わせてくれたのがこの作品である。
久々に清水訳も読んでみるかなあ。