2023/08/31記
そうか、今年で初出から70年なんだ。
映画は50年だったし。
最初に読んだ清水俊二訳は今でもオールタイムベストだ。
村上春樹の訳は話題になったが、さらにその後、去年と今年の2回に渡って新訳が出ていたことは知らなかった。
しかも今までの早川書房ではなく創元と小鳥遊から。
前置きが長くなった。
今回読んだのはその小鳥遊書房版のハードカバー。
訳者は市川亮平。多分この方の翻訳したものを読んだのは初めてだと思う。
この本の存在を知った時その紹介文から得た印象通り、とてもわかりやすかった。さらにはその場の状況描写の為のイラストもわかりやすく、作品のガイドになっていたように思う。
それでいてという書き方は変かもしれないが、多分今まで訳されたものよりも、より原著に近い文章になっているようにも思う。
そう感じたのは冒頭の一文が昔読んだ原書であるペーパーバック、家の中のどこかに今もあるはず、で読んだとても長ったらしいチャンドラーらしい文に思えたから。
答え合わせは出来ていないので間違いかもしれないが。
この一文に好印象を持ったせいもあって最後までわかりやすくそして面白く読ませてもらった。
そのわかりやすさのせいでというのもあれだが、何箇所か文字が飛んでいたり誤植と思われる箇所があったのも目ざとく見つけることができた。
まあ改めて読むとアルトマンの映画とはけっこう違うのだけれどマーロウそのものは地続きに感じるんだよな。
だから映画の方も好きだったりする。
いくつも間違いを犯し勘違いもし、それに対して後悔もしながら自分の信念を持っている、そんなマーロウの魅力が一番詰まっているのが本作だと思う。
さて、長話はこれくらいにしておこう。
もう一つの訳本が待っている。