2024/03/31

『TAR/ター』"Tàr"(2022)


(2024/03/31 Amazon prime)

スタッフロールをいきなり見せてくるあたりでこれは何か仕掛けてきそうだという予感。
それがいきなりそのロール明けの主人公から伝わる緊張に繋がる。
そこから描かれるのは音楽に対して忠実である彼の姿。
彼の意識の外にあるものは描かれない。
理路整然とした彼に対して殻を破れない周囲。音楽に対する向き合い方の違いに対して色々とアプローチをするがどれも上手くはいかない。
さらにはそれらすべてが悪意によって仕組まれているようにさえ見える。
それが具体的に発現するのがSNSというのが面白い。
最初から仕組まれたようにも見えるし、講義を受けていた生徒達すべてのリテラシーがその程度だから不特定の誰かかもしれない。そう思えてくるのは新しく入ってきたチェロ奏者の子の態度。そこに醜く縋りついているようにも見える。
徐々に、もしくは最初から彼は世界から置いて行かれている?
理解者はパートナーと娘のみ。
ただ、音楽に対して向き合っていられれば彼の世界は保たれる。
マッサージのシークエンスは彼の嗜好に対する世間の目とその現実を現したと観るべきだろうか。
と、そんな仮定をしてみたが、オーディションでの不誠実だけがあてはまらないのだよなあ。
リハパートに入った時の音圧が好き。