ただ、その情報無しでそこに辿り着いた時の喜びを得ることはできなかった。
それでもおかげでこの本に辿り着く事ができたのだから良しとするべきかな。
という前置き。
まったくの新作に出会えるのは何十年ぶりだろう。
久しく長編の翻訳は途絶えていたので嬉しい限り。(「変幻の地のディルヴィッシュ」以来)
しかも、何故今までゼラズニイがここまでがっつり手を付けていなかったのかが不思議なくらいの、まさに満を持しての題材との邂逅。
あの年代のロンドンに、物語の主人公達が集まって、旧きもの召喚の是非を争うだなんて、まさにゼラズニイの本領発揮ではないか。
しかも本編の語り部はそれらではなくその使い魔と言える存在達。
故に固有名詞の扱い方が面白い。
高名な御主人達女主人達は伯爵やら博士やら名探偵やらと呼ばれ、逆に名を持たぬものはその形態を表す固有名詞ではなく名が与えられている。
例外はジャックと多分ジルもそうかなというくらいか。
そして当然語り口も健在。
何かゼラズニイ濃度200%くらいで読みながら鼻血でも出るんじゃないかと思ったよ。
これが実質の長編遺作だなんて、なんて…。