2011/06/05

「とある魔術の禁書目録4」(2004)by蒲池和馬

「とある魔術の禁書目録」シリーズ4作目は、御使堕し(エンゼルフォール)編。


この作品に関わらず、そう例えば(うろ覚えだが)「バスタード!」などでも、天使がらみになるとひたすら冗談としか思えないくらい状況になるんだよな。

それをこういう形(天使の精神が下界に堕ちてきて全人類の精神と外見が玉突きシャッフルされることで術者の精神がその天使の器に入れ替わる)なんて展開に持っていくことでエロゲイベント一歩手前なシチュエーションを作り出したのは見事。

けど、そんなイベントさえも上条当麻の右手、幻想殺し(イマジンブレーカー)はブレイクし、さらにはその本物の天使でさえその右手には自分の存在を抹殺されてしまうという理由で触れることさえできないというチートっぷり。

さらにはここで早々に親友である土御門が実は魔術とも科学とも絡む多角スパイであることを白状され、神にもっとも近い聖者な神裂ねーちんは天使と戦う。


本作にはこのシリーズにおける魔術師の定義、基本的にはほとんどの魔術師が自身のあまりにもの弱さのため護身として持っている跳び道具であり、しかもその弱者っぷりが故にプロとしての精神は備えてはおらず、故にそのほとんどが赤ん坊に拳銃状態というその後にも関わることが出てきたりもする。
まあ故にたぶんどんどん長くなるであろう上条さんの説教タイムには何事もせず付き合ってしまう輩が多いのであろうなあ。

もっともこの説明アニメ版ではなかったような気が。


と、まあ実際簡単に説明するだけでも大変な設定の塊ながらもその部分まで含めて読ませてしまう上手さをこのシリーズは持っている。

さらにはそういった部分をうまく伏線を使う方法として、そう例えば後付け伏線の処理もしくは昇華のさせ方のうまい谷川流などは多分に才能的なものなのであろうが、この作者蒲池和馬の場合は最終稿を編集に渡す頃には次の次の長編の初稿が出来ていてその担当と打ち合わせてるというそのハイペースっぷりからきてるのだろうな。


話がやや逸れた。
まあ一方で相変わらず突っ込みどころは多い。
ただまあそれもひしひしと伝わる作者の作品愛と勢いが何とかしてくれる。


しかしこんな西尾維新の化物語以上に映像化しづらい作品をアニメ化したのは無謀だと思う反面こうやって読者がふれる機会を与えているというのは、原作者や出版業界には良いと思う反面、アニメにとっては…何かパッケージも売れてるみたいだからどっちにとってもいい話なのだな。結果として。