(以降ネタバレあり)
今回といい前回といい作者が作者だけにもはやアンソロジーと化してきたなあと思いながら読み始めたのだが、特にこの作品はその傾向が強かった。
何せMやマネーペニーだけならともかく、ルネ・マティス、フェリックス・ライター、メアリー・グットナイト、ビル・タナーやメイに至るまで総出演。
(ブースロイド少佐やQ課はメンバー一新されているが。)
さらにメアリー・グッドナイトには「グッドモーニング、グッドナイト」があったりフェリックスは手足を失いそうになったりまあいろいろ過去に何かあったようなことが。
そして、さらにはポンドの両親の死や叔母との関係やらまで突っ込んでいる。
しかしながら、今回のボンドは過去のシリーズがまったく存在せずサブキャラ含めて現在にシフトさせゼロから始まったもの。所属もMI6ではなく別組織。
基本的なキャラクターの性格や立場はオリジナルにほぼ等しいがそれを現在にそのまま当てはめている。
ダニエル・クレイグ版ポンドと立場的に近いといえば近いが設定に接点はないし仮にもあちらはカジノロワイヤルが存在する世界だし。
さて、内容はといえばリサイクル業界や世界に蔓延する飢餓の状況の事細かな分析で読者を引き込んでいくあたりはフォロワーとしては嬉しい限り。食を初めとするこだわり多い描写に関しては言わんもがや。
それに、クライマックス以降の度重なるどんでん返しが入る。
ここまでの大掛かりな展開は今まではなかったかな。せいぜい最後に意外な裏切り者がいるくらいで実は追いかけていたものが盛大なブラフというのは無かったように思う。
その中に細かな個人間の権謀術数が繰り広げられる文字通りのスパイゲーム。
ここらへんが好みの別れるところであろう。
どちらかといえば蘊蓄をやりすぎるのがフレミングで人間関係はここまで複雑にしなかったからなあ確か。
まあそんな複雑ではないか。
同じようなポジションで微妙に違う立場に似たような人間を配置して結果的にはそれらを陰と陽に分けてしまったあたりがジェフリーディーバーのこだわりだったのかもしれないのだが…と言った感じか。
さて話は続く要素を盛り込んでの幕切れとなる。
続けば嬉しいけれど続けてくれるのか?