2010/10/02

『七瀬ふたたび』(2010)(ネタバレあり)

『七瀬ふたたび』及び厳密に言えばその前に上映された『七瀬ふたたび プロローグ』を観ました。
(2010/10/02 at 渋谷シアターN シアター2)

この作品、原作に対する想いは散々書いたような気がするし、それでもたぶん半分も書いちゃいないのだけれど、今回はやめておく。
ただ、かなり好きだということだけここでは書いておこう。



さて、まずはプロローグから。
中川翔子監督、小中和哉脚本による10分程度の短編。物語のプロローグとして添えられた作品。


狙いとしては非常に良いと思う。構成、コンセプト共に○。キャスティングも良し。
ただし、特に映像表現が詰めきれていなかったのは残念。
イラストとの合成部分はもっと頑張って欲しかった。

まあキャスティングで七瀬の母親役に多岐川裕美引っ張ってきた時点で○なのだけれど、今まであまりちゃんとした形で出てきていなかった七瀬の過去という切り口で最初に見せるというのも良いなあと思った。ちなみに本編には多岐川裕美は出ない。


さて、本編。
まずはネタバレなしの感想。
正直に言ってしまえば原作を読んでない人にはあまり勧めたくない。
この作品だけで原作まで読んだ気になられるとそれはそれで嫌だ。

これを観て原作に興味を持つ人もいるとは思う。
でも、単体でこの作品を愛せ!というには、もう少し基本的な所で練り混みが欲しかったように思う。

けれども、原作を知って愛している人には勧めたい。
この作品を幾重にも楽しめると思うから。
(とはいっても前述の部分でひっかかってしまう可能性もあるが。)
少なくとも私はこの作品を愛した人と語りたい衝動にかられている。




続いて、ネタにあまり突っ込まないレベルで語ろう。既に観る気になっている人はここから先は観てからのほうが良いと思う。












この原作は、ある程度忠実に描こうとするには映画という枠ではなかなか難しい作品である。
なのでどうするのかと思っていたら、冒頭から「あ、すげえ」と思わされてしまった。
ここを切り口にすれば、全体の再構成や話の取捨選択はかなり絞る事が出来る。
原作冒頭が割とオーソドックスにキャッチーなのでその線かと思いこんでいたからそうかその手があったかという感じだ。

能力表現の仕方は好きだな。原作を尊重したやり方だと思う。

前者(再構成)は伊藤和典の本領発揮、後者(能力表現)は小中和哉らしいやり方であると思う。


役者に関しては芦名星の無機質な感じは割とうまくハマっていたと思う。
警察サイドは思い切り安全牌な配役だったし七瀬の仲間たちもうまいところを持ってきた。
強いて言えば子役の子はもう少し小さい子の方が良かったかも。


で中身に戻って、脚本がもたらした構成の妙があったおかげで、原作テイストがかなりそのまま生きていた。
それがとても良かった。

しかし後半になるに従い、徐々に苦し紛れの展開打破が増えてくる。
それを映画という名の力業で処理出来ていればそれはそれで面白かったのだけれど、如何せん小中監督はあまりそれが上手くない。
言ってみれば両者の食い合わせの悪さが出てきてしまったのだろうなあ。
ここが、誰にでもは薦められない理由である。

けど、それでも好きなんだよ。

これ以上は、本当に大きなネタバレになるのでまた改行。


















そうか!
そこに落とすか。
正直に言って七瀬が例えイメージだけでもキスシーンを迎えることが出来て、それだけが良かったね!〉七瀬、ということになりかねないと思っていたら・・・。


それだけを単に文章にしてしまえば残念に思われるだけかもしれないが、それが前にどのタイミングでどのように表現されてたかというところと、テレパス、時間遡行者、そして「七瀬ふたたび」の3つを絡めれることで、やられた!と思ったよ。

もしかして途中の苦し紛れな部分もわざとなのかと思いたくなるくらいに。
いやあれはダメなのだけれど。
脚本読み込むか書き直すかすべきだったと思う。〉苦し紛れなところ


さて最後にいわばジョーカーとして配置された吉田栄作の役柄。
私は良かったと思う。
チートキャラではあるが、強いが上に脆いところ。こういうところは本当にうまいな。