2011/02/12

「GOSICK s -ゴシックエス・春来たる死神-」(2005) by 桜庭一樹

TVアニメとして現在テレビ東京の深夜枠で放映されている「GOSICK -ゴシック-」を観て興味を抱き、さっそく図書館に予約をしたその原作の時系列で第一作にあたる本短篇集を読了。

短篇集とはいっても連作短編ではあるし、どちからと言えば短期間の連載、集中連載と言ったほうが話が早いのか。


一作目と二作目以降とでは連載誌が違ったりもするのだが、まぁそのへんの説明は省く。
単純に言ってしまえば一作目は連載の為の誌内コンペティションの一編として書かれたもので、その選からは漏れたが好評だったので別の誌面にて連載されたようだ。
それと前後して長編も発表されたが結果として文庫は長編4編が先に刊行されたのち、ようやく本作の発行に至った…のかな。

この一冊とそのあとがき、そしてTVアニメとして放映されている内容プラスアルファというカオスの欠片を再構成した結論は以上である。
まだカオスのままのような気がするのは、能力的な問題である。



さて、戯言はそれくらいにしてTVアニメも交えた感想など。

以降一部ネタバレは含むがミステリーとしてのネタバレは行っていないのでその点は安心して欲しい。たぶん。


まず、メディアの違い…というよりは発表形態の違い故に行ったのであろうが、TVアニメはこの原作を一部前後入れ替えて再構成している。
一番大きな違いはヴィクトリカと久城の出会いのきっかけとなる事件が違うことであるが、それはこの原作の刊行順とTVアニメのシリーズ構成を意識してのことと思われる。
目にする順番が変わればまた違った見方をするかもしれないが、このことにさほど違和感は感じなかった。

構成順としては原作のほうが正しいが、最初の数話で判断されて淘汰されていく傾向の強い昨今のTVアニメの状況からしてみれば賢明な改変といえると思う。

また、これはこの話を語る人間の違い、原作者とTVアニメのシリーズ構成者の嗜好の違い…なのかなかもしれないが、原作はオーソドックスなミステリーとしての構成を取っているのに対し、TVアニメの方は個々の謎解きそのものよりもヴィクトリカや久城の物語のほうに重きを置いているように思った。
…のが1話目だったのだが、2話目以降になるとTVアニメと同様物語の方に重きが置かれていた。
ここらへんも本作の発表の経緯から来る改変なのかと思う。


いずれにせよ元々後者のほうが好きな私としては結果として良かった。


あと、まだ長編を読んでみないと断言はできないが謎解きそのものは今のところ割と定番なものが多く、その代わりそれらを引っ張ることなく小気味良いテンポで解決していくところはとてもウマさを感じる。
TVアニメ版はそれをさらにテンポよく(引っ張ることなく)提示しているあたり、この作品の魅力を私と同じ部分で感じているのではないかなと思った。


などなどTVアニメのほうに良いところを色々感じていたりもするのだが、TVアニメのほうが説明不足な部分が多いというのも事実である。

あんなところやこんなところ。TVアニメでも尺を変えずに絵で表現できるのになんでこう変えちゃったんだろうなというところはある。
たぶんテンポを考えてのことなのかなぁとも思っているのだけれど、ここらへんは痛し痒しといったところなのか。



まぁ、何はともあれ気に入ったので引き続きこのシリーズは読んでいこうと思う。
テンポの良さから物足りなさを感じる人もいるかもしれないがそのテンポが繰り出すレパートリーの豊富さはこの作品の魅力の一つである。
そして、謎解きのためではなく物語を楽しむための物語は私の好物でもあるから。