2011/08/11

『コクリコ坂から』(2011) ネタバレあり


『コクリコ坂から』を観ました。(2011/08/10 at パルコ調布キネマ)


まず、ここでこの作品を観ることが出来たのは良かったかもしれない。

時期としては夏休み真っ盛りとはいえ、平日の昼下がりの回。街中の小さな映画館の水曜日1000円サービスデイ。
さらには一般認知度が高いジブリ作品。
場内は男女比1:9以上、年齢層は実に広範囲でグループパターンも多彩。

で、本編始まってまもなく、大人二人子供二人の女性4人組が私の前の列にバタバタと入ってきてまぁほっとしたのであろう。
そうそうに大人二人が少しだけ話し始めてほどなく静かに。
と思ったら子供用の座布団を思い出したらしく親が1組取りに行く。
当然もう一組の子も欲しがってさらに1組追加。

時と場合によっては迷惑に感じることもあるこんな風景やこんな音。
街中の小さな映画館のよくあるヒトコマ。
この場に限っては良かったなぁと感じさせる。
この作品はそんな作品でした。


(以降、もう少し内容に触れます。)





















この作品、昔聞いた音、見たことのある肌触りのものを心地良く表現しているんですよね。
この肌触り知ってる、とか、このホコリ臭さ知ってる、とか、この味は覚えてる、とか。
知覚に、五感に訴えかけてくる。
時代設定は1960年代前半、私の生まれる前なんですけれどね。
昔ながらの商店街とか舗装されていない土の香り、急な坂に囲まれた風景、海辺ではなかったけれど私のよく知っていた場所そのものでした。
木で建てられた古い建物なんてのも、叩けば永遠にホコリが舞うんじゃないかというのも皆知ってる、知ってた。
家族も多かったから大人数の食卓もそうだし、お釜で炊くご飯なんてのもね。

まぁそんなちょっとした生活の音、ふと見える景色、そんなものがとても懐かしく、心地良かった。


で、まぁそういったものを、たまに下手くそな事、恣意的な進行で演出がぶち壊すのですよ。話の流れは否定しないが、ちょっとそれはもう少しやりようがあるんじゃないかということができてない下手くそ感を持って。
せっかく振ったネタをスルーしたり、唐突な話の展開だったり。
普通はそういうのも個性だったり味になったり感じるのだけれど、今回は気に触ってばかりでした。なんだろう、監督を自分より上と見れないからかな。見てないからかな。
そこらへんは心地良さという概念に覆われている中だったので、対して不快という概念に感じるという。


けど、それでも日常のさえずりや匂い、光を感じられる映像や音は凄く好きであったりします。
対比するのであれば、『ALWAYS』からセットな感じ、CGな感じをさらに省いたもの。にここまでのものがあればもっと心地良かったかもしれない。
これは実写では難しいというか無理なのかなぁ。あの少しだけ絵画的な絵柄だからこそ受け入れられるのかもしれない過去の記憶。


で、まぁ但し、ですが、宮崎駿の脚本作品ですから原作はあくまでも走りだしのためだけの素材。彼の好きそうな世界設定に覆われています。
原作は未読なのに原作好きな人にはあまり受け入れられないんじゃないかなと思えてしまう辺りが今までがあるがゆえの功罪か。
そういう部分に対して考慮なされていないのは、特に『ゲド戦記』の時も聞こえてきていたにもかかわらず、相変わらずなのだろうな。
人の心を描くのが上手いのに、人の心が分からない…あ、何か親子がごっちゃになっているか。(^^;