2013/01/02

「機龍警察 暗黒市場」(2012)月村了衛




シリーズ前作が2012年日本SF大賞を受賞した「機龍警察 暗黒市場」(2012)を読了。

シリーズ3作目となる本作は、1作目の日本人の元傭兵、2作めのアイルランドの元テロリストに続き、ロシア人の元警官であるユーリが主役とも言える内容。

それぞれの過去を映しつつ描かれているという状況は前作と変わらず、まぁついでに言ってしまえば基本的なラインは前作をほぼ踏襲している。

但し、とは言ってもいろいろずらしてきたりとかそれぞれらしさを出してみたりとかでなかなかに面白い。

ロシアの警官、もしくは国家というものに対して我々が抱いているイメージと個人としての葛藤をうまく描いていると思う。
しかも前作と同様に物語の半分は過去の出来事のようなものだからな。

で、まぁ日本が舞台であるがゆえにそれ以上に腐っているのが…というのもちゃんと忘れちゃいない。
むしろ今作と前作で描かれているのは滅び行く旧態然としたものだからな。

そういったクライムものには定番のガジェット山ほどぶち込んで、今回は前回以上に「龍機兵」はアイコンに近いものと化している。クライマックスはもちろん押さえてはいるが。

(とここまで書いておいてなんだが一応ネタバレ防衛ラインを個々に敷いておく。)

























で、具体的な内容に関して少し書かせてもらうと、彼の最初のあれは文字通り濡れ衣だったのだろうな。
翌日見つかったというのは本当で、それを彼は感謝の念半分と妬ましさ眩しさ半分であのような策を取ったのだろうな。
そうでもなければ再びチケットを送りつけるようなことはしなかったはず。
ユーリ以上にゾロトフにとっては意味のある品だったのだと思う。
まぁ、彼がその後歩んだ人生を考えればそれ以前に自明の理か。


あおういう部分があって、あえてそれを最後まで明確に提示しないところも好きだ。
バララーエフとダムチェンコがあまりにもあっさり吐露してくるのはびっくりしたが、それで以降の流れに変な淀みが無くなったのも確かだ。ここは好みの分かれるところだが個人的にはバランス能力の良さを感じた。
彼らに関しては、特に前作があったのでいつ出てくるのかと待ち遠しかったよ。(笑)
そこらへんも含めてね。>バランスの良さ



さてまぁ、私の常としてどうしても診てしまう映像化に関しての観点でみてみると、特にドラマ色の強い本作は実写で観てみたいなぁと思ってしまう。
これ、国籍を変えるとだいぶ面白みが薄れてしまうのでだとするとロシア人(もしくは西欧人)大挙出演となってしまうのだがそういう意味ではNHKあたりが海外の放送局と共同制作か何かで作ってくれると面白いのだがなぁ。
かといって自分の国を貶めるようなものは国営放送では作らないだろうからううむ。

となるとアニメ化かぁ。それなら作品的には問題ないものが出来る可能性が高くなるのだが、予算面と一般的な最終評価が全然変わってくるだろうから…ということになりそうだ。
逆に職人的な部分である意味レベルの高い今こそなのだけれどううむ