2024/10/20

「カッコウ、この巣においで」(2024)富良野馨


冒頭から過去の話への持っていき方が良い。
「外」から見た一般的な視点からの彼の立ち位置を経てから過去が語られる事で彼、そして高義を始めとする周囲の実在感が増してくる。それは実在の地名や出来事も同じ事で、物語に引き込まれていく。
そこから無自覚で無神経で残酷な光景が拡がる。
ただそれは充にしても弥生や高義にしても仕方がない事で。前述の良さがここで生きてくる。
こういった人の心の描き方がこの人は本当に上手くて好き。
と、ここからが本番。
「今まで描かれてきた」諸々がどんどん結実していく。まさかその為にというものが形になりより良い事とより悪い事で振り回していく。
一応自転車はその結果が提示される前、メモの時点で何の為にだったかは気づいたが、それ以外はほぼやられたという感じ。名前なんて本人のモノローグまで全然気づいていなかった。
そういうのが無駄なく描かれている所も好きな所。
今回も堪能させていただきました。