2011/05/09

「涼宮ハルヒの動揺」(2005) by 谷川流

「ライブアライブ」
実際の音とビジュアルという部分におけるインパクトはさすがにアニメーションのほうが本領を発揮している本作であるが、この原作は原作でアニメでは表現の難しいもしくは分かりづらい部分においてよりSF的な要素、現実的な要素を作中に振りまいている。
そして、まぁこれはすっかり忘れていたのだろうが、「…消失」への前振り(まぁ発表時系列的には後振り)が少しだけ混じっていたんだということに今回気づいた。
これもアニメではたしか表現されていなかったとおもう。何故それらをしなかったのかは分からないが、たぶんそれよりも表現したいことに対して気が散ると判断したのであろう。


「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」
けっこう忠実にアニメ化されている本エピソードであるが、実は小説の方が長い。というかアニメではちょこちょこと端折っている。けっこうこっちのほうが面白いなというところもあるのだけれど、それはそれ。まぁ小説のように本編中に入る商店街のCM省けばもう少し入ったかもしれないが、そこはそこでアニメ化のほうでぜひ残しておきたかった部分であろうからしょうがないといえばしょうがない。何せ「…溜息」はアニメ化エピソードに出来る予定はなかったのだから。


以上がアニメ化済のエピソードで、以下がアニメ化未、つまり「涼宮ハルヒの消失」以降のエピソードである。


「ヒトメボレLOVER」
原作小説としては「涼宮ハルヒの消失」の直後、1週間も経たない時期のエピソードである。
そして、もしアニメの2期があるとすればこの作品はそのオープニングエピソードにふさわしい話である。
かの事件が終わり、元の生活を取り戻した彼らの属性を再認識するにふさわしい一編。
それにしても、この作品における長門の最後の一言がこれほど涙腺を刺激するものであったとはすっかり忘れていたよ。


「猫はどこに行った?」
本来は「涼宮ハルヒの暴走」に収録されている「雪山症候群」の中で語られるのみであった推理劇「猫はどこに行った?」。
推理劇という意味では「孤島症候群」に続くものでありながら、その存在意義としては「朝比奈ミクルの冒険Episode00」というポジション。
故に新鮮味を欠くなぁという部分で初見の際にはあまり面白みを感じなかったものの今回読みなおしてみて意外と面白かったと感じた次第。
それは何故だろうと問われれば、初見時にはそのトリックにのみ気を取られていたのだけれど、今回はそのトリックよりこのエピソード内で起こったことそのものが主眼になったからかな。
何せ、「…消失」から怒涛の展開真っ最中のエピソードである。
前後に関連のない話であるはずがない。
うん、やはりハルヒが無意識下で引っ張ってきたキャラクターたちは皆一筋縄ではいかない人たちばかりである。


「朝比奈みくるの憂鬱」
「…分裂」「…驚愕」へと繋がる序章のひとつ。
今までは表立って見えていなかった「ある組織にとってのあるべき未来」の争奪戦が本作や「雪山症候群」などで徐々に明らかになっていく。
一方でキョンに対するハルヒの信頼度がだいぶ上がってきたのが分かるのがニヤニヤものの一編で、いろいろあっても最後それがあることで読み手も救われるんだよね。
謎が増えるだけ増えて解答のないままなのだけど、ハルヒのあれが見れることで、「まあ今日のところはこれでいいか」みたいな。
こういうことをきちんとしてくれるところが好きだ。