2010/09/18

「・・・・・絶句」(1983) by 新井素子

ハヤカワJA文庫から新たな書き下ろし短編2編(上下各巻に一つづつ)が追加されての刊行となった「・・・・・絶句」上下巻を読了。




今読んでみるともの凄く気恥ずかしかったりする部分もある。それは「若さ」からくる部分。
たぶん10年以上ぶりに読んだ自分の記憶以上に若さを感じたと思う。


しかし今回はそれよりも、みずみずしさとエネルギーに満ち溢れた作品である事を強く感じた。

なんなんだこのポテンシャルの高さは!

当時は同年代であったが故に気づかなかったのであろうが、今の自分の年だったら当時でも眩しくて仕方がないと感じたんじゃないかと思う。

そりゃ当時の20代の女の子視点ということでの視野の限界とかも無いことはない。(それが前述の若さ)

けど、それを補って有り余る程の力と彼女自身の資質が漲っている。



ホントこんなにエネルギーに満ちた作品にはたぶん他に出会ったことがないわ。

この作品に出会えていて良かった。

まあ、おかげでどんな人気作家だろうが、手抜きが目立つ人達には無茶苦茶辛辣になってしまったが、というのは余談だけどね。



そうそう、一方でこの作品を再読したことで自分が何故例えば「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズやグレンラガンに無条件に惹かれたのかがやっと判ったよ。

どちらも私からしてみるとこの作品をベースにして観ていたのだな。

無論手垢のついたネタやらなので実際に元ネタなんじゃないかとか意識されてるんじゃないかとは言わない。
ただ、創作のベースになっているところは同じだろうな。
新井素子も谷川流も相当な本好きだったはずだ(確か)
そういうベースが話の大ネタになっている。

グレンラガンと関係で言えば話の膨らませ方とその最後の部分での理屈を超えた徹底した前向き感。
それがエネルギーの奔流となり…な部分がどちらも好きだ。


さて話を戻そう。

今回付いた短編二編だが、言ってみればボーナストラックみたいなものでした。
やはり新井素子は短編よりもう少し長いもののほうがというのと、逆に別の作品としてではなく本編の一部としてであればもっと受け入れやすかったかなと思う。立ち位置の微妙さが少し残念でした。